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​若手薬剤師の業務日誌(2021年~)

5年目までの若手薬剤師が、日々の業務で感じた事や勉強したことを書いています。

2021.9.15

3年目の森です。

新型ウイルス感染症の拡大に留まりが見えません。年齢を問わず、全国民が自身の健康管理に対してここまで敏感になった時代はそうないと感じながら日々働いています。当院薬剤師もワクチンや新しい抗ウイルス薬の調製を行っていたりと感染症の拡大に立ち向かっています。一刻も早い終息を願ってやみません。

特にご年配の方は、病院に足を運ぶこと自体に不安や抵抗感もあると思います。薬物治療の面から、少しでも治療のサポートや不安を拭うことができればと思っておりますので、いつでもご相談くださいね。

 

さて、私からはある肺アスペルギルス症(カビ菌による肺感染症の一種)の患者さんに対して、薬剤師が治療薬の用量提案を行った例をご紹介します。

 

一般に、体に投与された薬物は、効果を発揮してくれたのちに主に肝臓で処理されるか、腎臓から排泄されるかの2パターンに分かれます。そして、肝臓と腎臓どちらかの機能が落ちていればそれだけ体からの薬物の排泄処理が遅れ、副作用のリスクが高まるわけです。

 

今回の治療で使った治療薬Aは肝臓で処理されるお薬でした。しかし患者さんの肝臓は、健康な人と比べて3段階程機能が落ちていました。当然、常用量の投与はできません。しかし薬の説明書には2段階までの肝機能低下者に対する参考減用量しか載っていないのです。

そこで、医師と薬剤師で薬物Aの用量を検討しました。

ーどのくらい減量すればいいか?ー

患者さんの命がかかっていますので、安易な用量設定はできません。ここで上司が参考にしていたのがオンライン上の医療データベースの中にある海外論文の症例報告でした。

 

問題解決の糸口を見つけるためには、例えば

①重度の肝機能低下患者に

②治療薬Aを投与すると

③正常肝機能患者と比べて

④どれだけ副作用リスクが高まるか

といった感じで順序を組み立て、問題を明確化することで知りたい情報を得られやすくなります。未知の症例に対してはこのようにして、ある症例報告=根拠にもとづき、効果とリスクを考慮して治療法を検討していきます。(これを医療用語でEBM;Evidenced Based Medicine   -根拠に基づく医療-といったりする)

※実際には参考となる資料を見つけて終わりではなく、得られた情報の吟味や、患者さんに適応させたあとの評価も大切なのですが長くなるのでここでは割愛します

当時2年目だった私には、この上司の薬剤師の介入例が非常に強く印象に残りました。

 

インターネット上には膨大な医療に関するデータベースがあり、薬剤師もそれらを効率よく収集するスキルが求められます。日々の業務にはこういったオンライン情報の活用が欠かせません。

新型ウイルス感染症の拡大を肯定するつもりではありませんが、このパンデミックがきっかけとなって世の中の慣習や仕組みが大きく変化したこともまた事実だと思っています。

小学生の頃「画面越しで顔を見ながら会話できたら」と願った記憶がありますが、あれから約20年後の現在、それは当たり前になりました。我々薬剤師の勉強会もすべてオンラインに代わり、遠隔診療・服薬指導など新しい医療提供のかたちも広がりつつあります。

 

さらに何十年後、情報通信技術の利活用で医療がどのように発展していくか私自身も大きな期待があります。ただ、薬による効果を最大限に、リスクを最小限に、と薬剤師が目指す本質は変わらないはずです。

まだまだ若手の私ですが、これから先の未来も薬剤師として患者さんの健康保持、治療に貢献するべく、目の前の患者さんとしっかり向き合っていきたいと思います。

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